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障害者枠で働くメリットとデメリット

2026.04.17

コラム イメージ

◆はじめに

近年、民間企業で働く障がいのある方は増加し続けており、法定雇用率も段階的に引き上げられるなど、企業における雇用の重要性は年々高まっています。一方で、障害者雇用枠と一般雇用枠では、業務内容や受けられる配慮、給与水準、成長機会などに違いがあり、それぞれに利点と課題が存在します。本資料では、制度の概要を整理したうえで、一般雇用との違い、働く上でのメリット・デメリット、精神障がいのある方が仕事で感じやすい困りごと、活用できる支援機関について紹介し、自分に合った働き方を考えるための参考情報をまとめています。

 

 

◆目次

はじめに

目次

障害者雇用とは

障害者雇用枠で働くメリット

・合理的配慮を受けながら安心して働ける

・雇用が安定し、長く働き続けやすい

・障がいを隠さず、精神的負担が少ない

障害者雇用枠で働くデメリット

・給与水準が低くなりやすい

・キャリアアップ・成長の機会が限られやすい

・求人数・職種の選択肢が少ない

精神障がいを持つ方へ ~納得できる働き方を選ぶために~

 (1)無理なく就業を続けているか

 (2)何を大切にして働きたいか

障害者雇用のサポートと支援機関

 

 

◆障害者雇用とは

障害者雇用とは、障がいのある方が、その特性や心身の状態に応じた合理的配慮を受けながら、能力や適性を活かして安定的に働くことを目的とした雇用制度となります。令和6年現在、民間企業で雇用されている障がい者の数は677,000人と21年連続で過去最高を更新しました。常用雇用労働者に占める、障がい者である労働者の数を指す実雇用率は2.41%、障害者雇用率達成企業の割合は46.0%となっています。

雇用障害者数と実雇用率の推移③.png

図表 雇用障害者数と実雇用率の推移

全ての事業主には、従業員数に応じて一定割合以上の障がい者を雇用する「障害者雇用率制度」が義務付けられており、例えば常時雇用労働者が150人の企業では、法定雇用率2.5%に基づき3人の雇用義務が生じます。民間企業の法定雇用率は令和5年4月に2.7%と定められ、令和87月の引上げに向け、段階的な見直しが進められています。今後は人数確保に加え、継続して働ける職場環境づくりが一層重要となっています。

※上記例はわかりやすいように単純化していますが、実際には 人の数ではなく、週の勤務時間(20時間以上または30時間以上)、 障がいの内容・程度に応じて算定の方法が変わります。

障がいのある方を雇用する方法には、障害者雇用と一般雇用があります。ここでいう一般雇用は、障がいのある方が自身の障がいを開示せずに健常者と同じ雇用枠にて雇用される形態を指します。障害者雇用と一般雇用の主な違いは、「対象者」「職務内容」「受けられる配慮」に分けられます。

表①.png

参考:障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~(厚生労働省)

 https://www.mhlw.go.jp/content/000767582.pdf

 

 

◆障害者雇用枠で働くメリット

ここからは、障害者雇用で働くメリットとデメリットを紹介します。下記の表は障害者雇用で働くメリットとデメリットの一例となります。ここからは、各項目について、詳しく説明していきたいと思います。

表②.png

①合理的配慮を受けながら安心して働ける

障害者雇用促進法において合理的配慮の提供を事業主に義務付けています。障害者雇用における最大のメリットの一つは、障がいのある方が自身の特性を開示したうえで、合理的配慮を受けながら安心して働ける環境が制度として整えられている点と言えます。

合理的配慮の例としては

  • 口頭説明だけでなく文字による資料を併用する
  • 車いす利用者のために机の高さや座席配置を変更する
  • 障がい特性に応じて休憩時間を調整する
  • ピーク時間から出勤時間をずらすなどの時差出勤
  • 定期的な通院への時間の配慮
  • 業務内容の調整

などが挙げられます。当事者向けの体験談サイトでは、障害者雇用枠で働くことで体調や症状を無理に隠す必要がなくなり、心理的な負担が大きく軽減されたという声が多く見られます。

②雇用が安定し、長く働き続けやすい

障害者雇用は、障害者雇用促進法に基づき障がいのある方が職業生活を通じて自立し、継続的に働くことを目的とした制度となります。そのため、企業側も「短期離職を前提としない雇用」を意識して採用・配置を行う傾向があります。即戦力や成果よりも、「安定して通勤できるか」「無理なく継続できるか」といった点が重視される傾向があります。そのため、本人の特性や希望に合った業務設計が行われやすく、入社後のミスマッチが起きにくいとされています。また、障害者雇用では、就職後も就労定着支援やジョブコーチ支援など、外部機関によるフォローを受けられる場合があります。

障害者雇用は企業にとっても、多様な人材を活かす組織づくりや職場環境の見直しにつながり、結果として業務の標準化やチーム全体の働きやすさ向上に寄与する側面があります。

③障がいを隠さず、精神的負担が少ない

障害者雇用では、障がいや体調面の配慮が前提となっているため、無理に自分を装ったり、症状を隠したりする必要がありません。この点が、精神的な安心感につながる大きなメリットとされています。障害者雇用の職場では、上司や同僚も「配慮が必要な人が働いている」という前提で関わるため、体調不良や配慮を求めることに対する後ろめたさがあるとの声もあります。人間関係での不安や罪悪感が減ることも、精神的な安定につながります。障がいを隠さず、自分の状態を受け入れてもらえる環境は、安心感や自己肯定感を高め、長く働き続ける土台になります。精神的負担が少ないことは、離職防止や職場定着にも繋がる重要な要素とされています。

 

 

◆障害者雇用枠で働くデメリット

①給与水準が低くなりやすい

障害者雇用では、本人の障がい特性や体調面への配慮を前提に、業務範囲を限定した職務(補助的業務・定型業務・軽作業など)が設定されるケースが多くあります。その結果、責任範囲が比較的狭い、高度な専門性や成果責任を求められにくい、といった特徴が生じやすく、職務給・成果給をベースとした賃金体系では賃金水準が抑えられやすい傾向があります。

企業側も「無理をさせないこと」を重視するあまり、成果評価が控えめになる、チャレンジングな業務が任されにくい、といった状況が生じる場合があります。その結果、能力や経験が十分に賃金へ反映されにくいという声も当事者の体験談として挙げられています。

②キャリアアップ・成長の機会が限られやすい

障害者雇用では、本人の体調や特性への配慮を重視するため、事務補助、ルーティン作業、軽作業・定型業務といった業務範囲が限定された職務に配置されるケースが多くあります。その結果、企画立案・判断・マネジメントなどの経験を積みにくく、スキルの幅が広がりにくい=キャリア形成につながりにくいという構造が生じやすくなります。

また、企業側が「無理をさせない」「体調を崩させない」ことを重視するあまり、責任の重い仕事を任せにくい、新しい業務への挑戦を控えるといった判断がなされることがあります。結果として、本人に成長意欲や能力があっても、挑戦の機会そのものが与えられにくいという課題が、当事者の体験談としても語られています。

③求人数・職種の選択肢が少ない

障害者雇用は、一般雇用とは別に設けられた「障害者雇用枠」での採用が基本となります。この枠は法定雇用率の達成、安定した就労と定着を主な目的としているため、企業ごとに募集人数や職種があらかじめ限定されているケースが多い状況にあるといえます。その結果、一般雇用に比べて、そもそもの求人数が少なくなりやすい側面があります。

障害者雇用で多く見られる職種として、一般事務・事務補助、データ入力、軽作業・清掃、社内サポート業務などが挙げられています。

一方で、営業職、企画職、専門職、管理職といった職種は募集自体が少ない、または対象外となることが多いのも事実。そのため、「やりたい仕事」や「これまでの経験を活かせる仕事」を見つけにくい状況が生まれやすいと指摘されています。

 

 

◆精神障がいを持つ方へ ~納得できる働き方を選ぶために~

全般的にはこれまで述べたとおりですが、特に精神障がいを持つ方にとっては一般枠自体への辛さという面を考える必要があります。

(1)無理なく就業を続けているか

障害者雇用と一般雇用を職場定着率で比較すると、障害者雇用は一般雇用と比べて2倍以上高い定着率を示すデータが存在します。一般雇用では障がいを開示せず雇用されるケースが主なため、必要な配慮を職場に申し出ることが難しい、周囲が障がいに気づかない、どう配慮すれば良いかわからない等の状況が生じ、業務の継続が困難になっている可能性があります。

 下記グラフは、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センターによる「障害者の就業状況等に関する調査研究」から引用したものです。グラフは精神障がいを持つ方の職場定着率の推移を示しています。グラフからもわかるとおり、精神障がいを持つ方にとって障害者求人か一般求人かという求人区分の違いは就労の継続において大きな意味を持つことが示されています。

精神障がいを持つ方の例で見てみると、一般求人のうち特に障がいを非開示として就職したグループでは、就職後わずか3か月で半数が離職しており、1年後には3割弱しか職場に残っていないことが分かります。一方、障害者求人を選択したグループでは、1年後の定着率が約65%に達しています。これらの結果は、精神障がいを持つ方にとって、自身が納得できる働き方や就業形態を選択することの重要性を如実に示していると言えるでしょう。企業側も就職者側も、可能であれば勤続が長く続くことを望んでいるはずです。その願いを実現するためにも、どの求人区分を選択するのかは、極めて重要な判断であると考えられます。

定着率グラフ3.png

 図表 求人種類別にみた精神障害を持つ方の職場定着率の推移

図表は「障害者の就業状況等に関する調査研究」のデータより弊社にて作成

(2)何を大切にして働きたいか

最後に、精神障がいを持つ方を念頭に1つの見方を提供したいと思います。以下は精神障がいのある方へ行った、就業に関する困りごとについての調査の結果となります。

表3 2026-03-17 114842.png

職場での困りごと1位は障害者枠、一般枠いずれの場合も「給与が低い」でした。障害者枠、一般枠いずれの場合も給与の低さに思い悩む声をよく聞きます。一般的に、障害者枠は給与が低くなりがちだとされていますが、一般枠でも同様に給与で思い悩むことは変わらないかもしれません。

2位以降の理由は雇用枠によって直面する課題の質が異なることを示しています。一般枠で働く精神障がいを持つ方は、業務内容や裁量の面では幅が広がるものの、合理的配慮が十分に得られにくく、「人間関係に馴染めない」「上司や同僚とのコミュニケーションが難しい」といった心理的・対人関係上の困難を感じやすいと言えます。特に、障がい理解の不足や配慮の曖昧さが、就労継続や職場定着の妨げとなるケースも少なくはありません。

一方、障害者枠で働く場合、体調への配慮や働き方の柔軟性が確保されやすい一方で、業務内容が限定的になりやすく、「教育・研修の機会が少ない」「仕事が簡単・単調で成長実感が得にくい」といった困難を抱えやすい傾向にあります。

これは、安定就労を優先するあまり、能力発揮や成長の視点が後回しになっている場合もあると言えるでしょう。しかし、障害者雇用であっても働きやすさへの配慮と併せて、スキル習得や成長の機会を意識的に用意している職場も存在します。せっかく障害者枠で働くのであれば、教育や研修の機会がある仕事や成長実感のある仕事ができる職場を選ぶ、という考え方もあります。

障害者雇用で職場を選ぶ際のポイントは、制度や配慮が整っているどうかだけでなく、自分の特性をどこまで理解してもらえる環境か、また無理のない形で力を発揮し続けられる仕事内容かと否かいう点にあります。しかし、こうした点は求人票だけで判断できるものではありません。実際の業務内容や職場の雰囲気、配慮の運用のされ方などは、面接や対話を通じて初めて見えてくることも多いのも事実。質問しにくいと思わずに、教育や研修の機会があるか、どのような配慮が受けられるのかなどを質問し、安心して働くために、納得感を持って職場を選んでいただくことが大切です。

精神障がいのある方が働き方を選ぶ際には、どちらの雇用枠が優れているかではなく、「自分は何を大切にして働きたいのか」を理解したうえで選択することが大切でしょう。教育や研修に力を入れている職場や段階的に役割を広げられる職場を選ぶことで、安心と成長を両立しながら働くことは決して特別なことではありません。自分のペースで力を発揮し続けるための選択肢の一つとして、障害者雇用を前向きに捉えることも大切なのかもしれません。

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」

 

 

◆障害者雇用のサポートと支援機関

①働く前の準備を支えるところ

・就労移行支援事業所

「働くための練習をする場所」

生活リズムを整える

仕事の練習(PC、報連相、体調管理)

自分の得意・苦手を整理する

職場体験・実習

② 仕事探し・就職を支えるところ

・ハローワーク(障害者専門窓口)

「仕事探しの入口」

障害者雇用の求人紹介

働き方や配慮の相談

企業との条件調整

・民間の就職支援サービス

「選択肢を広げるサポート」

障害者雇用に理解のある企業を紹介

本人の特性と仕事のマッチング

就職後のフォロー

③ 働き続けるための支援

・障害者就業・生活支援センター

「仕事と生活をまとめて支える相談先」

職場の悩み(仕事・人間関係・体調)

生活の悩み(通院・お金・生活リズム)

本人と会社の間に入って調整

・ジョブコーチ

「職場での実務サポート役」

仕事のやり方をわかりやすく整理

上司・同僚への伝え方を調整

職場に慣れるまでの伴走・ハローワーク(公共職業安定所)

 

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