Column
2026.08.17
障がい者枠で面接を受ける場合、特にはじめて受けられる方は、一般の面接で聞かれることとかなり違うことに戸惑う方が多いと思います。その結果「本来の力を発揮できずに不採用になってしまう」というケースも発生しています。そこで今回は、障がい者枠と一般枠の面接で質問されることの違いに着目したチェックリストを作成しました。
このチェックリストは、障がい当事者と弊社NTTデータ・ウィズの人事・採用担当経験者が協議しながら作成したものです。精神障がいのある方がはじめて障がい者枠で応募することを想定し、面接直前に自分の状況を振り返り、企業へ伝える内容を整理することを目的としています。
今回のコラムでは、チェックリストの項目に沿って面接前に整理しておきたいポイントを一つずつ見ていきます。面接準備の参考としてぜひ活用してみてください。
チェックリストを検討する上で、既存の就労に関わるチェックリストを調査しました。(調査したチェックリストは後述の項目「参考チェックリスト」に記載しましたのでご覧ください。)
しかしながら、面接に関わるチェックリストが見当たらなかったため、私たちにて作ることにいたしました。
これがはじめて面接を受ける方の参考になれば幸いです。
まずは今回作成したチェックリストをご紹介します。
精神障がい当事者向け 面接で伝えること・確認することチェックリスト.pdf
上記のチェックリストをリンクよりダウンロードしていただき、チェックリストを見ながら以下の文章をお読みください。可能な方はチェックリストを印刷して書き込んでみていただければ幸いです。
まず、障がい者枠の面接がどのような流れで進むのかを確認しておきましょう。あらかじめ全体の流れを知っておくことで、落ち着いて面接に臨みやすくなります。
企業によって違いが大きいため一概に言えませんが、多くの場合は「自己紹介」「職歴」「志望理由」「障害特性の説明」「配慮事項の話し合い」「逆質問」という流れで進みます。
このうち「自己紹介」「職歴」「志望理由」「逆質問」は一般枠の面接と同じですが、「障害特性の説明」「配慮事項の話し合い」は障がい者枠の面接特有の項目です。
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最初に行われることが多いのが自己紹介です。氏名やこれまでの経験、現在の状況など1分以内を目安に簡潔に説明し、自分がどのような人物なのかを面接官へ伝えるとよいでしょう。
続いて職歴について質問されることが一般的です。これまで経験してきた仕事の内容や身につけたスキル、実績などを整理しておきましょう。就労移行支援事業所での訓練や実習経験を伝えることもできます。
その後は志望理由について質問されます。
また、障がい者枠の面接で特徴的なのが障害特性と配慮事項の説明です。詳しくは後述します。
最後には逆質問の時間が設けられることが一般的です。仕事内容や職場環境、合理的配慮の運用方法など、気になることを確認できる機会です。面接は、企業が応募者を知る場であると同時に、応募者が企業を知る場でもあります。疑問点があればしっかり確認してみましょう。
このように、障がい者枠の面接でも一般採用と同様に働く意思の確認があります。またそれだけでなく、自分自身の障がい特性の理解や必要な配慮についても確認されます。
次からは、それぞれの項目について具体的に見ていきましょう。
まずは面接時に「伝えること」についてです。
面接では、面接官からさまざまな質問を受け、それに答えていくことになります。
この資料では回答内容を整理し、ご自身の考えをまとめていただくための項目を用意しています。
面接でまず整理しておきたいのが、「なぜ応募したのか」という志望理由です。障がい者枠の面接では、障がいの状況や必要な配慮について話す機会が多くなりますが、まずは働くという意思を伝えることが大切です。
この志望理由を伝えること自体は一般採用でも同じですが、「なぜこの企業の障がい者枠の求人に応募したのか」という理由は伝える準備をしておきましょう。面接官は「いろいろな会社が障がい者枠で募集しているにも関わらず、なぜ自社を選んだのか」を知りたいと考えています。そのため、企業のどこに魅力を感じたのかを志望動機に盛り込むことで、より説得力のある説明になるでしょう。
また、働く意思とあわせて自分の強みについても整理しておきたいところです。
強みというと高度なスキルを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、障がい者枠では必ずしもそのようなスキルだけが強みになるわけではありません。そのため一般枠でも聞かれる「自分の強み」をチェック項目として入れています。
例えば、コツコツと作業を続けられること、ルールや期限を守れること、正確に業務へ取り組めること、人の話を丁寧に聞けることなどが立派な強みになります。
大切なのは、自分がどのような場面で力を発揮できるのかを具体的に説明できることです。強みと業務内容が結び付くほど、より説得力のあるアピールになります。
これまでの仕事や実習、訓練の中で評価された経験があれば、それを交えながら話してみましょう。面接官は配慮が必要な部分だけでなく、「どのような場面で力を発揮できるのか」という視点でも応募者を見ています。自分の強みを理解し、自信を持って伝えることが、働く姿をイメージしてもらう第一歩になります。
精神障がいのある方が障がい者枠で応募する場合、「現在、安定して働ける状態にあるか」は、多くの企業が確認したいポイントの一つです。ここで大切なのは、病気や障がいがあることを隠したり、「絶対に体調を崩しません」と無理に答えたりすることではありません。
面接官が知りたいのは、安定して働くための土台となる体調が整っているかどうかです。例えば、生活リズムが整っていること、決まった時間に起床できていること、日中の活動を継続できていることなど、現在の体調を客観的に説明できるようにしておきましょう。
また、通院の状況についても整理しておくことが大切です。通院の頻度や曜日、勤務への影響の有無などを説明できると、企業も安心して受け入れを検討しやすくなります。
例えば、「月に一度の割合で通院している」「勤務時間の後に受診している」「定期的な通院のため平日に半日休暇が必要になることがある」など、勤務上必要な調整があれば具体的に伝えましょう。治療を継続できていることは、体調管理に取り組めている証拠でもあります。
さらに、服薬による業務への影響についても確認しておきたいポイントです。薬によって眠気や倦怠感などが出る場合には、対策があればどのような対策を取っているかを説明できるとよいでしょう。例えば、服薬時間を調整している、十分な睡眠時間を確保している、主治医と相談しながら副作用の管理を行っているといった工夫が考えられます。
症状や副作用そのものよりも、それらとどのように付き合いながら働こうとしているのかを伝えることが大切です。
障がい者枠の面接では、障がいによってどのような場面で困りやすいのかを説明する機会があります。これは苦手なことを伝えるためだけではなく、自分の特性をどれくらい理解できているかを面接官に知ってもらうためでもあります。
まず技能面では、体力や集中力、マルチタスクなどに関する困りごとを整理しておきましょう。体力、集中力、マルチタスクは、実際の業務にも関わるため面接で確認されることが多い項目です。
例えば、「長時間作業を続けると疲れがたまりやすい」「複数の業務を同時に依頼されると混乱しやすい」「集中力が切れると作業ミスが増えやすい」といった特徴があるかもしれません。大切なのは、「苦手です」と答えるだけでなく、どのような状況でその困りごとが起きやすいのかを具体的に説明できることです。
それ以外にも技能面で困りごとがある場合は挙げていきましょう。
コミュニケーション面についても同様です。コミュニケーションというと対面をイメージすると思いますが、対面以外のコミュニケーションについても説明できるようにしておくのがよいでしょう。
対面での会話は問題なくても電話対応には強い緊張を感じる方や、口頭だけの指示では内容を覚えにくい方もいます。また、会話よりもメールやチャットのほうが落ち着いてやり取りできるという人もいるでしょう。
自分にとってどのようなコミュニケーション方法が理解しやすいのかを整理しておくことで、職場とのよりよい関わり方を考えやすくなります。
さらに、自分の今の症状に対して行っている対策についても伝えられるようにしておきたいところです。
健康面への対策としては、十分な睡眠を取る、規則正しい生活を心掛ける、ストレスを感じたときは早めに休息を取るなどの方法があげられます。体調の変化を記録し、早めに不調に気付けるよう工夫している方もいるでしょう。
一方、能力面への対策としては、メモを取る、タスク管理表を活用する、作業手順を書き出すといった工夫が考えられます。例えば、複数の仕事を整理するために優先順位を一覧化したり、指示内容を記録して確認したりする方法です。
面接では困りごとだけでなく、「そのためにどんな工夫をしているか」まで伝えることで、自分の特性を理解しながら働く準備ができていることを伝えられるでしょう。
障がい者枠の面接では、現在の体調だけでなく、体調が悪化したときにどのように対応するのかについても説明できることが大切です。面接官が知りたいのは、「体調を崩す可能性があるか」ではなく、「不調のサインに気づき、適切に対処できるか」という点です。
自分なりの対処方法や支援体制を整理しておくことで、安心して働くための準備ができていることを伝えやすくなります。
まず整理しておきたいのが、体調悪化時のサインです。例えば、寝つきが悪くなる、朝起きるのがつらくなる、疲れやすくなる、集中力が続かなくなる、気分の落ち込みが強くなるなど、人によって現れ方はさまざまです。
こうした変化に早めに気づくことは、体調管理を行ううえで大切なポイントになります。自分にどのようなサインが出やすいのかを把握し、具体的に説明できるようにしておきましょう。
また、体調悪化時の対策についても整理しておきたいところです。例えば、早めに休息を取る、生活リズムを見直す、主治医に相談する、支援機関へ連絡するといった方法があります。
重要なのは、「不調になったら頑張って我慢する」のではなく、「不調のサインに気づいたら早めに対応する」という考え方です。自分なりの対処方法を持っていることは、安定して働くための大きな強みになります。

さらに、相談先についても整理しておくことが大切です。家族や友人は、日頃の様子をよく知る身近な存在です。体調の変化に気づいてもらったり、気持ちを聞いてもらったりすることで、不調の早期発見につながることもあります。
近い所にいる方だけでなく、遠方の家族やネット上の友人なども大事な相談先になります。困ったときに頼れる人がいることは、働き続けるうえで大切な支えになります。
一方で、通院先の主治医や就労移行支援事業所などの支援機関も重要な相談先です。働き方についての相談もできるため、不調が続いた場合にも適切なサポートを受けることができます。
面接では、「困ったときは誰に相談するのか」を具体的に説明できると、支援体制が整っていることが伝わり、企業にも安心感を持ってもらいやすくなるでしょう。
そして合理的配慮の内容については、双方で認識を共有するために「確認すること」が重要です。
配慮事項は個人により差が大きいため、例示した内容がご自身には当てはまらない場合もあります。
参考としてご覧いただき、ご自身に合った配慮事項を挙げていただければと思います。
障がい者枠の面接では、必要な合理的配慮について話し合う機会があります。合理的配慮というと、「会社にお願いごとをすること」のように感じる方もいるかもしれません。しかし本来は、自分が持っている力を発揮しながら働くために必要な環境や支援について、企業と一緒に考えるためのものです。
配慮事項を整理するときは、まず「どのような場面で困りやすいのか」を具体的に考えてみましょう。例えば、周囲の音が多い環境では集中しにくい、複数の指示を同時に受けると混乱しやすい、電話対応で強い緊張を感じるといったケースがあります。
次に、その困りごとが業務にどのような影響を与えるのかを説明できるようにしておくことが大切です。「集中力が低下して作業効率が落ちる」「指示の理解に時間がかかる」など、仕事との関係を具体的に伝えることで、面接官も状況を理解しやすくなります。
また、自分自身がどのような工夫や対策を行っているかを整理しておくことも大切なポイントです。
例えば、メモを取る、タスク管理表を活用する、分からないことは早めに確認するなど、自分なりの工夫を説明することで、仕事への取り組み方や職場での対応方法を具体的に伝えることができます。
そのうえで、「指示を文章でもいただけると理解しやすい」「定期通院のため月に一度勤務時間の調整をお願いしたい」といった、必要な配慮について相談してみましょう。
さらに、配慮事項については「希望条件」と「絶対条件」を分けて考えておくことも大切です。
希望条件とは、あると働きやすくなる配慮です。例えば、「静かな席への配慮」や「チャットでの連絡手段」などが挙げられます。
一方、絶対条件とは、継続して働くために必要不可欠な配慮です。「通院の継続」や「特定の健康管理上の配慮」などがこれにあたるでしょう。
絶対条件とは、働き続けるために欠かせない条件と言い換えることもできます。たとえば超魅力的で高給の求人であっても、「この条件を満たせない場合は断わらざるを得ない」という一線です。
絶対条件を引き上げると応募できる求人は少なくなります。自分にとって本当に必要な条件は何かを整理しておくことが大切です。
希望条件と絶対条件については、必ず両方を記載する必要はありません。ご自身の状況に応じて、どちらか一方のみを記載していただいても問題ありません。
合理的配慮は特別扱いを求めるものではなく、お互いに理解を深めながら長く快適に働くための大切な対話の機会と考えておきましょう。
障がい者枠の面接は、自分を評価されるだけの場ではありません。企業に自分を知ってもらい、自分も企業を知るための時間です。
そのためには、障がいのことだけでなく、働きたい気持ちや強み、日頃の工夫、そして将来の働き方についても整理しておくことが大切です。
面接では完璧な受け答えをする必要はありません。もちろんできることが多い方が面接で有利なことはあります。
しかし、後悔の少ない面接にするために本当に大切なことは、自分の状態をできるだけ「正直に」伝えることです。
今回ご紹介したチェックリストを活用して、ご自身の強みや働き方を整理するきっかけとなり、自信を持って面接に臨むための一助となれば幸いです。
回答イメージが分かるよう、回答例を記入したチェックリストを掲載しています。
我々が参考とした、または自己理解などに役立つと思われるチェックリストの一例を以下に記載します。ご覧ください。
・就労移行支援のためのチェックリスト(厚生労働省) (※本来は支援者向けのリスト)
・精神障害者のための職業準備性チェックリスト(社会福祉法人 多摩棕櫚亭協会)
・就労準備性チェックシート(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター)
他にもいろいろなチェックリストが存在しています。Web検索やAIを活用するとさまざまなチェックリストを見つけることができます。
自分に合ったチェックリストを探すのもよいでしょう。